【2019年参加】 香川大学 法学部 T.Sさん

(文化財課)

私は夏の長期休暇中、高松市役所・文化財課の埋蔵文化財センターにて五日間にわたるインターンシップに参加させていただきました。以前から生まれ育った地元に貢献したいという想いが強く、就職を考える上で、市民の声をしっかりと聴き、その生活に寄り添うことのできる市役所職員の仕事に興味を持っていました。そのため業務を体験させていただくことでその仕事内容を知り、実際に職場の雰囲気を感じたいと思い、今回の参加を希望しました。その中でも埋蔵文化財センターを選んだ理由は、歴史と人をつなぐ仕事に興味があったことや、私たちに身近な存在であり、幅広い年代から利用されている埋蔵文化財センターなら、職員の方々の市民に寄り添う姿勢を学ぶことができるのではないかと思ったからです。
埋蔵文化財センターとは、地中に埋もれた文化財を調査し、その活用や保存を図り、私たち市民文化の発展に寄与することを目的としている機関です。埋蔵文化財にかかわる調査研究や、発掘した出土品、その他資料の整理・保管や展示、情報提供を行い、教育普及に努めることを業務としています。埋蔵文化財センターと聞くと発掘調査や企画展を最初に思い起こされる方も多いかと思いますが、土地開発を行う際に、遺跡があるかどうかを調べたり、調査に立ち会ったりすることも重要な役割の一つだと聞きました。自分の想像していた市民の方との関わり方とは異なった側面を知り、様々な場面で私たちの生活に貢献して頂いているのだと改めて感じました。
このようにひとくちに埋蔵文化財センターの業務と言っても多種多様ですが、その根本には歴史を後世に伝えていくという目的があります。今回のインターンシップ中ではその目的に通じていると実感させられる業務を体験させていただきました。
まず一つ目が、正確な情報を記録として残す作業です。私が行わせてもらった主な作業としては、遺物の実測図データの入力、発掘調査地の地図落とし、遺物の画像データ取り込み作業などのほか、瓦の拓本を取る作業や土器の洗浄などが挙げられます。例えば土器の洗浄では、傷つけないよう注意を払いながら泥を落とし、表面に残る些細な情報ももらさないように配慮されていました。そういった一つひとつの配慮が正確な情報を残す手立てとなるそうです。冊子や企画展といった、私たちの目に触れる段階に至るまでに地道な作業工程が沢山あり、いかに正確な情報を後世に残すかを念頭におき、職員の方々がどの作業に対しても真摯に向き合われている姿が目を惹きました。また、土器の実測やデータ入力など個々での作業の印象が強いのですが、実際には皆さんが分からないことは相談し合い、お互いに協力しながら和気あいあいと作業されており、全体で働く重要性を感じました。


そして二つ目が、歴史の楽しさや魅力を知ってもらう業務です。私は主に、三角縁神獣鏡や銅鐸などの鋳造体験の補助と、研磨キッド作成のお手伝いをさせていただきました。埋蔵文化財センターでは来館してくださる方に対して、昔のモノづくりを通して歴史の楽しさや、奥深さを知ってもらうきっかけづくりを行っています。鋳造体験はその一つですが、補助をさせていただき、子供たちを中心にその家族も、より歴史に興味を持って帰られていることが印象的でした。その際、職員の方は子供たちが自発的に学ぶ姿勢を大事にしており、センターそのものが教育普及を行う機関として大きな役割を果たしているのだと実感じさせられました。歴史に興味を持ってくれる人を増やすことも後世に歴史を残す足掛かりになると思いました。また、今回は外部イベント用に研磨キッドを作成しましたが、来館される方を対象とするだけでなく、積極的に地域の方々に関り、歩み寄っていく姿勢を大事にされていると感じます。

過去のことと向き合う仕事ではありますが、未来を見据え、最新の技術を取り入れながら行う現在進行形の意義あるお仕事だと思いました。職員の方々と五日間と短い期間ですが一緒に活動することで、自分の将来ありたい理想の姿を考える貴重な機会となりました。今回体験したことや感じたことを周りの人にも伝えていけたらと思います。
最後になりましたが、職員の皆様にはご多忙のなか、台風のため中止となった実習の振替日を設けて頂くなど、ご配慮頂いたこと心から御礼申し上げます。高松市埋蔵文化財センターの皆様、並びに今回のインターンシップにご尽力下さった皆様、このような貴重な体験をさせていただける機会を設けて下さり、誠にありがとうございました。