【2020年参加】 香川大学 農学部 N.Tさん

朝の五時頃、従業員の方が牛の移動を促す掛け声で目が覚める。夜はお風呂から上がっても、牧場の照明は付きっぱなしだ。私はインターンシップ期間中、牧場内のログハウスに宿泊させていただいたのだが、常に牛を相手に仕事をしている方がいたように感じる。牛の生活に合わせて仕事をすることはとても大変だと感じた。

インターンシップ実習のうち、最初の三日間は主に子牛の世話を担当した。きちんとは数えていないが、子牛は50頭近くいたように感じた。意外だったのは、子牛は水や餌(ペレット・牧草)にはほとんど興味を示さないことだ。毎日新しいものに変えていたが、その多くが残されていた。一方で、一日に二から三回与えるミルクにはすごい食いつきを見せ、ミルク入りのバケツに頭を突っ込んでいた。ミルクをあげる時は子牛の体調を調整するタイミングでもあり、子牛によっては薬を入れていたミルクを与えていた。従業員の方は毎日子牛の状態を管理しており、必要なミルクをてきぱきと作りあげては与えていたので、その手際の良さに感心した。哺乳瓶を卒業してもらうために、バケツでミルクを飲む訓練をする子牛がいるのだが、これがなかなか大変だった。まず、子牛に自分の指を吸わせるのだが、子牛は牛乳の出をよくするために乳房に頭突きをかますようで、私の手は何度も頭突きをされた。だが、バケツからミルクを飲んでくれるようになると、わが子の成長を見ているようで、とても嬉しかった。

インターンシップ実習のうち、後の二日間は主に搾乳を担当した。搾乳にはディッピング、乳頭マッサージ、拭き取り、ミルカーの装着などの工程があるが、私は中でも前搾りが難しいと感じた。前搾りとは最初の牛乳を捨てるために行われて、同時に牛乳が白濁していないか、固形物が混ざっていないかを確認する作業である。具体的には、シャーレに乳頭四本それぞれの牛乳を手で絞るのだが、牛によって乳頭の位置が様々なうえ、牛によっては乳頭を触っただけで暴れたり、牛乳が出にくい乳頭があったりと、素人には大変時間のかかる作業だった。従業員の方は私に比較的簡単な牛を担当させてくださったが、それでも私の二倍以上のスピードで作業を行っていて驚いた。また、私はインターンシップ実習生なので、前搾りと拭き取りの段階で毎回従業員の方に確認してもらわなければいけなかったため、何度も手を止めさせてしまい非常に申し訳なかった。

インターンシップ実習を通して、生き物を相手にする仕事はとても大変なことが分かった。牛一頭一頭を毎日観察、管理しなければいけないし、仕事の時間が幅広く、牛の体調不良や出産時には付きっ切りになることもある。また、牛などの大型動物は体重が重く力があるため、常に怪我をする危険性があり、実際にたまに事故が起こっていることも知った。だからこそ、従業員の方々は仕事に対して、生き物に対していつも真剣に向き合っており、そこにはプロの意識が感じられた。そして、従業員の方々の生き物、特に牛に対する愛情を感じた五日間であった。私たちが日常的に消費する牛乳、牛肉などの生産は、このようなプロの方々の努力に支えられていることが分かり、とても有意義なインターンシップ実習となった。